カクテル ショートとロング

カクテルの話のなかによく出てくるのが「ショート・カクテル」と「ロング・カクテル」という語です。このショートとロング、何が「短」あるいは「長」なのかを簡潔に言いますと、それは「時間」のことです。もう少し詳しく言えば「そのカクテルを美味しく飲むに適した時間」の事で、その時間がショートなのかロングなのか、という目安になる語句です。冷たいカクテルは冷たいうちに、温かい飲み物は温かいうちに、が理想なのは料理と一緒です。

具体的には、例えばギムレットやサイドカーやマティーニなど、シェイクやステア等の作り方に関係なく、キリッと冷えた液体だけをグラスに注ぐものは「ショート」カクテルです。当然目の前に出された時が一番冷たくて美味しいものです。あとは、時間の経過とともにぬるいカクテルになってしまいます。

一方、ジン&トニックやモスコーミュールなど、大振りのグラスに氷も入っているタイプが「ロング」カクテル。こちらは冷たさも持続するので比較的ゆっくり飲めますよ、という意味です。

ショートカクテルとロングカクテル(西麻布バーオレンジ店内)

左:ショートカクテル「マリリン・モンロー」
右:ロングカクテル「ジン・フィズ」

じゃあ、その時間はどれくらいなのかというのも野暮な話ですが、一般的によく聞くのは、ショートは3分から長くても5分前後、ロングは15分から20分くらいでしょうか。なにも秒針とにらめっこする必要はありませんがご参考までに。

ただ、「3分ペースでは身体がもたない」のも、ごもっともな話です。そんな時は合間に水などを頼みましょう。なにも急ぐ必要はないので、インターバルを置くつもりで一息いれると良いでしょう。ロング・カクテルに切り替えてみるのも、ひとつの手です。

また、一般的にはショートと言われているカクテル(マティーニやダイキリなど)を、もう少しゆっくり時間をかけて楽しみたいな、というときには、カクテルグラスではなく、氷を入れたオン・ザ・ロックのスタイルもまたお勧めです。といっても当然、氷は溶けてくるので、ロングでも水っぽくなる前に飲み干すのが理想的であるのは言うまでもありません。

お寿司屋さんで、ついつい会話に夢中になって、せっかくの握り寿司が長らく手つかずのまま、という場面に遭遇することがあります。それと一緒で、カクテルが長時間残っているのは、バーテンダーからするとこれはけっこう辛いものです。もし例えば、思っていたよりも甘すぎたので口に合わない、などの理由があれば最初のうちに申し出ましょう。ライムなどを搾って酸味を加えたり、きちんとした店では嫌な顔ひとつ見せずに手直しをしてくれるはずです(ロング・カクテルでも、もちろん同様です)。

「美しいカクテルグラスに注がれた綺麗なカクテルを、すぐに飲んでしまうのは勿体ない!」こともあるでしょうが、なにも問題なく美味しいと感じたのであれば、美味しいうちに召し上がってしまいましょう。作ったバーテンダーもうれしいもので、良いバーテンダーは、間髪入れずにせっついて「次なにしましょ!?」などと言わず、ちゃんとした頃合いを見計らってくれるハズです。

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